0207|09|
2007|09|10|12|
2008|01|02|03|
2009|01|05|08|10|11|12|
2010|01|02|03|04|09|11|12|
2011|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2012|01|02|03|04|05|06|07|08|10|11|12|
2013|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2014|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2015|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2016|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2017|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2018|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2019|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2020|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2021|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2022|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2023|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2024|01|02|03|04|05|

2011-03-31 SPEEDIを邪推する [長年日記]

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)というシステムがあるそうです(今まで知らなかった)。

緊急事態が発生した際に、六時間先までの希ガスによる外部被曝線量や甲状腺等価線量などをシミュレーションすることができるものだそうです。

ところが、事故発生後から、この情報の開示を色々な団体が政府に請求してきたが、全く開示されないと言う問題があり、国民からは不満・・・というよりは、不信の声が上っていました。

そこで、この非開示とされてきた理由を「邪推」してみました。

-----

ところで、実は私、パソコンに触れた時から今日まで、色々なシミュレーションをやってきました。

具体的には、

○アルバイト先の塾の生徒の成績予想、

○半導体の電圧・電流等の挙動、

○歩行ロボットの歩行パターン

○ファジィ推論によるパン焼き炉の温度や電子レンジのサンマとサバの判別方法

○大阪梅田駅を想定した大量歩行者の歩行挙動

○エイズの免疫機構をヒントにした最適解探索

など。

結構楽しかったです。

条件設定パラメータを弄ると、結果が様々に変化して、夜が明けるまでコンピュータの画面に喰い入っていました。

-----

ところが、逆に、シミュレーション結果を妥当な値にする為の、「初期値パラメータ」を探すことは、とても難しいです。

特に気象・流体系のシミュレーションの場合は、計算結果から初期値を求めることはできません(これを「不可逆」といいます)。

初期値に対してセンシティブ(敏感)なシミュレーションの場合、初期値の与え方によって、計算結果が、それはもう、「信じられないくらい滅茶苦茶な結果となる」からです。

-----

SPEEDIは、政府の持ち物なので、基本的には行政府の行動を、論理的・科学的にに裏づけしなければならないと思うのです。

今回のSPEEDIのミッションは、「政府の避難指示の妥当性」を出さなければならなかったと『邪推』してみます。

-----

SPEEDIに入力される情報には、気象観測情報、アメダス情報と放出核種、放出量等の情報があり、これは「点」の情報として入力されます。

また、さらに高さ方向の情報も入力しなければなりませんが、当然、地上1000メートルとかに固定されているセンサなんぞある訳がありません。

そうなるとですね、非常に少ない計測地点だけを使って、計算をしなければなりません。平面(二次元)の状態を把握するのでも相当難しいのですが、当然汚染は大気にも広がっています。

すると、3次元の空間をシミュレートする必要があるのですが、もうこれは、相当に難しいと推認されるのです。

イメージを言えば、

◯北海道の稚内で測定した海水温度と、

◯沖縄で測定した気温から、

◯福島の河川の温度を計る、

というような、難しさ(ちょっと大袈裟か)。

そもそも、問題となっている事故が進行中の原発から放射された「放射性物質の総量」が全然分からんのですから、「今日の天気が、晴れか曇りか雨かは教えないけど、本日の最高予想気温を出せ」と言うような感じでしょうか(これも大袈裟かな)。

で、決定的なデータ不足の中でシミュレータを稼働させているのではないかな、と。

多分、空間をメッシュ状の単位で区切って、その単位内で各種の計算(流体計算とか)線形・非線形補完をする計算方式を採用しているのだろうと思います。

この計算式は結構膨大なものですから、どうしてもスーパーコンピュータ(スパコン)クラスのパワーが必要になってきますが、求める精度によっては、相当の時間(数時間~数十時間)が必要になるのではないかと思っています。

-----

で、恐らく、その計算を行った科学者は、その計算結果を見て、「愕然」としたのではないかと「邪推」するのです。

――― なんだ、これ?

例えば、

◯中国やロシアまで、放射性物質が拡散しているという計算結果が出てしまった。

間違いなく前代未聞の国際問題に発展するでしょう。

政府は、国際的な非難を浴びることを回避する為、公開できません。

◯地元でなく、東京や北海道の方が汚染濃度が高い計算結果が出てしまった。

政府が定めた避難範囲(半径20-30km)の意義をぶち壊してしまう為、公開できません。

◯汚染が全く見られないという計算結果が出てしまった。

「そのSPEEDIというシミュレータは、オモチャか!」という非難を受け、「そんなシステムに税金使うな」の大合唱で予算が無くなるのを回避する為、公開できません。

再計算する度に、訳の分からん計算結果が出てくる。

国民からは計算結果を出せと言われているが、こんな結果を出したら、間違いなくSPEEDIの来年度予算はなくなるし、諸外国の政府・研究機関からは笑いものになる。

困った。どうしよう。

-----

少し「邪推」の程度が酷すぎますかね。

私も本当にこんなことがあったとは、信じていません(というか、信じていいよね)。

でもね、仮に、

そういう無茶苦茶な計算結果があったとしても、

それが日本の技術者の名誉を損うことになったとしても、

それでも公開するのが、政府系研究機関の義務でしょう。

SPEEDIに血税を払っているのは、我々国民なのですから。