「初音ミク」関係で9つの寄稿をしたにも関わらず、私自身は、未だ、ボーカロイドの楽曲にのめり込んでいく、という兆候が見られません。
音楽をゆっくり観賞する時間があまり取れない ―― というのは、言い訳でしょう。
やっぱり、私には「人工音声」は聞き取り難いのです。こればかりは特性なので、どうしようもないと思っています。
それはさておき。
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昔、新人の時代に、上司に誘われて飲み会の二次会に参加したことがありました。
そこで、私の同期の女性に、デュエットを申し入れる見知らぬおじさんがいて、違和感を感じたことが、ありました。
「若い女性を口説く」為の口実にしては、雑すぎる。
同期の新人が3名が、しかも上司付きでいる中で、こんなことをする男性は、戦略を誤っているとしか思えません。
あまりの懸命さに、彼女はデュエットを引き受けたのですが、そのおじさんがした選曲を聞いて、私は、「ああ、そういうことか」と納得したのを覚えています。
選曲は ―― 今井美樹さんの、名曲「PIECE OF MY WISH」
♪ 朝が来るまで 泣き続けた夜も ・・・ だけど最後の答えは一人で見つけるのね ~ ♪
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文句なしの名曲です。
しかし、これを「おっさん一人で唄う様」は、本人は勿論だが、周りの人も正直「困る」。
確かに、女性のデュエットという態様を取らないと様(さま)にならない、と思えます。
おじさんの戦略は、全くもって正しかったのです。
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性差や年齢を越えて、誰の歌であれ、素晴しいものは、素晴しいのです。
しかし、それぞれの歌には、それぞれの歌が選ぶ「主体」というものがあります。
主体が変わったときに、「誰の歌であれ、素晴しいものは、素晴しい」と、必ずしも言えないことがあるのも、残念ながら事実なのです。
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私、「ボーカロイド」というものは、歌手としての自分を代替する「楽器」である、と思っています。
■米寿を迎えるおじいさんが、ジュブナイルの心を、「初音ミク」を使ってポップ調の調べで謳う。
■中学生の男子生徒が、人妻に恋焦がれる「不倫の心」を「初音ミク」を使って演歌で謳う。
少し適用例が違うかもしれませんが、「今井美樹を歌いたいおじさん」の心を受けとめる効果が、「ボーカロイドにはある」と私は信じているのです。