時代劇で正義の味方が、襲いかかってくる悪代官の手下どもを、バッタバッタを斬り倒し、最後には悪代官を倒すーーー
よくある、時代劇の一シーンですが、これを「待てよ」と思っている人は結構多いのではないかと思っています。
悪代官の手下は、その性質上、当該悪代官の業務範囲に属し、かつ、当該悪代官における手下に属する任務を遂行しているに過ぎません。
(特許法35条(職務発明規定)援用)
要するに、私が言いたいことは『手下は手下の業務を遂行している』ということなのです。
だいたい、
(1)真夜中に
(2)凶器(真剣)を剥き出しにして
(3)訳の判らんセリフをほざきつつ、
・・・一つ、人の世生き血をすすり
・・・二つ、不埒(ふらち)な悪業三昧
・・・三つ、醜い浮世の鬼を・・・
(4)鬼の面を付けて、人の家の庭に入ってくる、
そんな、気持の悪い奴、私なら絶対に係わりたくないけど、下っ端の彼等の立場としては、職務上、逮捕または排除しなければならないでしょう。
そもそも、職務を遂行している彼等が、その悪代官と共に共同謀議を実施していたとは考えにくいのです。
なぜなら、悪代官の共犯者は、『越後屋』と決っているからです。
(新潟の人は、怒ってもいいのじゃないかな、と思うのですが)
さて、話を戻します。
時代劇で正義の味方がやっていることとは、善意の職務遂行者を、無警告で、大量虐殺している、ということになるます。
仮に、それが正義の実現の為であったとしても、人道上、認容される範囲を大きく逸脱した暴力行為です。
下っ端にも、奥さんがいて、可愛い家族がいるでしょう。
その下っ端は、毎日一生懸命勉学に励み、ようやく宮仕えができるようになり、昨日は、幼ない娘から、『父上、本当におめでとうございます』とか言われて、思わず、落涙を隠しつつ、猪口をあおいだのかもしれません。
それが突然の死。しかも、意味不明の大量虐殺。
こんな暴挙が許されるべきでしょうか。
私は子供達に言って聞かせるのです。
「我々が物事を見る時は、その裏の意味や、見えない背景も捉えて、判断するようにしなければならないのだよ」と。
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と言う話を、同僚にしていた時のことです。
『江端さん、それは大人の視点です』と警告されました。
『今、そういう知恵を付けると、子供が物事をなんでもかんでも皮肉に捉えるようになって、仲間外れになるか、苛められるようになりますよ』
なるほど、同僚の言うことももっともだと思いました。
私の考えを、なんでもかんでも子供に話すことは、必ずしも良くないのかもしれません。
子供は自分の力で、このような矛盾を掴み、自分の力だけで解決していくべきだ、と思うようになりました。
ですけど、懲りずに、結構、子供とそういうことを喋っています。