1年程前に、コンテンツのクラウド研究をやっている同僚から、クリエイティブコモンズ(以下、CCという)について質問されて、逆に「何それ?」と訊き返ししてしまったことがありました。
研究所内で、「歩く知財」(などということは、勿論、誰も言っていいませんが)江端が、著作権に係わることで答えられないとは、と、非常に恥しい思いをしたものです。
また、ちょうど今、著作権関係の調査をしている最中でもあり、知財関係で知りあいになった方からも、シンポジウムの聴講を薦められていましたので、事前に申し込んでおきました。
文化庁主催 第8回コンテンツ流通促進シンポジウム『著作物の公開利用ルールの未来』
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私は、省庁が主催するシンポジウムの聴講で「大爆笑」したのは始めてです。
こんな、面白いシンポジウム見たことない。一瞬で時間が過ぎさったという感じでした。特にパネルディスカッションは凄かった。
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まずは、メンバが凄い。
あのTPPと知財の関係を見事に看破した「「ネットの自由」 v.s. 著作権」の著書である、福井健策先生。
私は原稿書き上げた後、先生の著書を読んで、タップリ3日は落ち込んだものです。
「うわー、動いている福井先生だ。サイン貰ってこようかな」と思ったりしました。
森美術館館長の南條さんの話は非常に興味深かったし、メディア・アクティビスト(作家のことかな?)の津田さんは、「CCのコンテンツをTSUTAYAに置けば良い」というという趣旨の発言をされて、会場を湧かせていました。
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しかし、極めつけは、漫画家の赤松健先生(『ラブひな』『魔法先生ネギま!』の作者(残念ながら江端は未読))のお話が、もう最高。
漫画家としての立場から、同人誌やコミマに対する愛情と、それと同時に漫画家としての不快感を入り交えた上での、新しい概念、
――「黙認」
というマークをプレゼンで提示された時、会場は大爆笑となりました。
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「コミケ当日だけ『見逃す』という」この新しい権利概念を提示された時、私はもう涙が出る程笑いました。
福井先生が「『黙認』をどう定義するんだ」と突込んでおられましたが。
確かに、現行法においては勿論ですが、多分「黙認」を明文規定しているライセンスって、地球上に存在しないと思う。
「この人、本当に凄い人だ」と心の底から畏怖しました。
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赤松健先生は、さらに、びっくりする観点から、我が国のコンテンツ立国案を提示されていました。
「BL(ボーイズラブ)の同人誌は、フランスで凄い人気が高い。我が国は、膨大な資源をすでに所有しているので、これを、どんどん輸出すれば良い」
確かに、これなら資源は無尽蔵にあるとも言えるなぁ、と感心しました。
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私、どうしても無体財産権というと、どうしても産業財産法(特許法とか意匠法)の方を考えてしまうのですけど、
「同人誌を資源」と考えるのであれば、どうして、これはなかなか凄い案です。
「同人誌」が、これまでの我が国の「特許発明」と肩を並べ、「石油」や「天然ガス」に対抗しうる「輸出資源」となるかもしれません。
とすれば「同人誌」を今の地位(法律的には、真っ黒に近い違法状態)に置いておくのは得策ではありません。
CCでも法律でもなんでも良いので、権利関係をキレイに整理して、輸出可能な資源として、ちゃんと「精製」することを考えはじめないと、いけないでしょう。
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「同人誌」が「再生可能エネルギー」になるという未来は、ちょっと痛快だと思いませんか?