いずれ分かることなので、お話してしまいますが、 先日、漫画家の赤松健先生にインタビューさせて頂きました。
今回も「大爆笑」させて頂き、それと、色々と沢山の「元気」も頂きました。
これから4回程度に分けて、別途、技術コラム(×英語コラム)の方で色々と書かせて頂く予定としています。
さて、それはさておき。
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その時、先生から「児ポ法改正」と言う言葉が出てきたのですが、その内容を詳細には知らなかったので、今回改めて調べてみました。
この法律に辿りつくまでに、検索エンジンで10分以上もかかりました。
『まず、法律の本文はどこにあるんだよ!本文だよ!!』
批評や解説は腐るほどあるのですが、先ず私は、それらを読む前に条文を読みたかったのです。
多くの人は、批評や批判をする前に、まず条文を読もうと思わんのか ――まあ、思わないでしょうね。
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私は、著作権についてのコラムを書いた時、つくづく思ったものです。
―― 批難してくる人間の95%(江端主観)は、著作権法条文を1ページも読んでいない。
まあ、それが一概に悪いとは言いませんが。
インターネットを使っている人の全てが、TCPやHTTPのプロトコルを理解していなければならないかと言われれば、それは「暴論」というものです。
しかし、人を批難してくるなら「形式的にでも、調べてきてから文句言えよ」とは言いたい。
「こっちは、ここ10年、ほぼ毎日、知的財産権法の条文集に、汚い自分の字で書き込みする程度には、ちゃんと勉強してきているんだから」、と。
さて、話を戻しまして。
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「児ポ法」、正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」で、1999年に制定。
5分で読んだ概要は以下の通り、
■第17条までの比較的短い法律。
要点は3つ。
■(1)児童の買春、周旋、勧誘の防止、と、
■(2)被害を受けた児童の適切な保護、と、
■(3)児童ポルノコンテンツの、生産、譲渡、輸入、輸出の禁止(インターネットを使ったものも含む)、と刑事罰(5年以下、500万円以下の罰金、その併科)
私の所感としては、上記(1)(2)の規定は当然として、(3)は特許法の実施と侵害の概念に似ている、と感じました。
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では、その「児童ポルノ」コンテンツとはなんぞや? と思い、「児童ポルノ」の定義を探してみると、第2条3項に記載があります。
江端による乱暴な解釈を以下に記載します
■以下のアナログまたはデジタル写真である(2条3項柱書き)。# 動画は写真?
(1)児童がSEXしているもの、または性的暴力を受けている写真(エロか否かは関係なし)(同1項)
(2)児童の性器に接触している写真で、エロいもの(同2項)
(3)児童の全裸または半裸の写真で、エロいもの(同3項)
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さて、ここから本論。
今回の改正案は、「児童ポルノコンテンツ」を「持っているだけ」でアウトという点にあるようです。
流石に、私もこれにはビックリしましたね。
特許権でも、特許侵害品を「持っている」ことがアウトとなる規定がありますが、それは「譲渡」や「輸出」が目的である場合に限られます(特許法101条3号6号)。
特許侵害品であっても、それを自分で作って、または個人的に使っている場合には、侵害は問えません。
比して、今回の改正案は凄いです。
所持だけで、即アウトになるのです。
特許法が、「条件付き所持」を違法と制定するまで、相当な時間をかけてきたのに対して、こんなに早く対応できるのはどうしてか、というと、まあこんな理由でしょう。
■「そんな写真を、蔵書している奴や、財布に入れて持ち歩いている変質者は『この日本にははいらん』という嫌悪感。
■そのような写真をインターネットで、一度でも流出したら、もう事実上取り返しがつかないのが常識ですが、その常識に対する立法側からのチャレンジ 。
―― つまり、所持しているだけでも、それが再び流出する可能性がある。それなら、その可能性を、事前に完璧に「叩き潰す」
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■「生徒に全裸写真を写メで取らせて、それをメールで送付させる「教師」」
■「自分の娘の全裸写真を、インターネットで散蒔く「保護者」」
このような阿呆を、現在の「児ポ法」では裁けないのです。
条文を見てみると、『前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し』(第7条2項抜粋)、となっており、その「前項」とは『児童ポルノを提供』(同1項抜粋)する目的でなければ、対象にならないのです。
簡単に言うと、「自分のスマホに入れて、見て、ニヤニヤ楽しんでいるだけの「変態教師」や「狂った保護者」は、現在の「児ポ法」は裁けないのです。それどころか、児童の合意が認定されれば、違法行為も成立しないかもしれません。
例えば、上記の行為を、成人カップルが行って「違法行為」になるか、と問われれば「そりゃないだろう」と思えますよね。
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さて、「児ポ法」の改正案ですが、感情論としては私は理解できます。
■私二人の娘たちの全裸写真があったとして、それを所持している奴がいたら、私が「この手で殺しに行く」だろうし、
■それを販売している店は、「手製の爆弾で爆破する」だろう、
と、ナチュラルに思えるからです。
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だからこそ、私は、この法律は「極めて危険な匂いがする」と思っているのです。